しらかわ読書会

福島県白河市で読書会を中心にいろいろやっています。

しらかわ読書会(第5回:太宰治「女生徒」)を開催しました

昨日11月23日(土)、第5回しらかわ読書会を開催いたしました。

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今回の課題図書は、太宰治「女生徒」です。

www.aozora.gr.jp

短い作品ですので、もしお時間のある方はぜひ読んでみていただければと思います。タイトル通り、女生徒が日常のある一日の出来事について語る、という作品です。

参加者は、わたし含めて七名でした。参加者の方の感想や気になった部分は次のような記述でした。

 

「眼鏡や下着など、自分自身が身につけるものについて」

「自分自身が女学生だった頃を思い返すと、『わかる、わかる』となる部分がある」

「裏側を覗いている感じがする」

「語り手の気持ちがとてもよくわかる。悩んだり解決したり、精神状態の上下が共感できる」

「書いているのがオッサン(=太宰)だと思うと、ちょっと気持ち悪い」

「女生徒が語っている部分と作者の太宰が顔を覗かせる部分がある。最後の一文は、太宰だろう」

「饒舌な語り口が良かった。思考の流れを書いている」

「星空のシーンが良い」

「誰しもが経験した来た時期で、過ぎてしまったから『かわいいな』と思える。ただ、自分が同年代だったら、友達になるのは難しいかもしれない」

「ちょろいので、こういう女の子がいたらすぐ好きになって、おそらく傷つけられて失恋する気がする」

「性的な葛藤のようなものが感じられる。それを男性が書いたといういやらしさも感じた」

 

おおむね「誰もが通る道」という感想は共有されていたものと思われます。主人公を表すキーワードとして、「上から目線」というものもありました。きりゅう個人は、いわゆるYouTuberの人たちのことを思い返していました。

YouTuberのなかには、ふだんの朝や夜の生活を公開している人たちがいます。「モーニングルーティン」や「ナイトルーティン」と呼ばれるものです。

もちろん、撮影され公開されているのは、普段の生活ではなくて、YouTubeで全世界の公開されることを前提にした「日常」です。そこにはYouTubeにおける「ルーティン」動画群の作法や、動画を観てもらうためのテクニック、そして本当に見せることができない生活感をうまく隠蔽していく作品作りが行われています。

「女生徒」を読んでいると、そんな観ることを意識されている部分がすっかり抜け落ちた生々しい感じがしました。「裏側を覗いている感覚」の根源は、そのあたりにあるように思われます。

もともと本作品は太宰のファンである女性が書いた日記をもとに創作されたものだそうです。日記はもともと誰かに呼びかけることはあっても、読まれることを想定していない、もしくは読者には自分しか想定されていないはずです。そこには「ルーティン」動画のような、自分の生活を整形してきれいに見せる意図は働いていない。

そこが太宰の技術なのか、とも思います。日記を再構成し、自分自身の考えを巧妙に織り込みながら、それでいて生々しい「裏側」をそのまま表しているように感じさせるのですから。

お足元の悪い中、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。

次回は、森見登美彦太陽の塔』を読みます。はじめての長編なので参加者が集まるのか、ちょっとどきどきしております。

kiryu-ken.hatenablog.com

クリスマスっぽく本の交換会なども実施したいと考えていますので、ぜひご参加ください。