しらかわ読書会 on web(#1:横光利一「春は馬車に乗って」)を開催しました
昨日25日、はじめてのTwitter読書会を開催しました。課題図書は、横光利一「春は馬車に乗って」で、7名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。Twitter読書会の課題もわかりましたので、あわせてご報告したいと思います。
今回はTwitter上での読書会の開催をいたしました。ウェブカメラを使って読書会をやる読書会さんも多い中、当会ではあえてTwitterで実施をしました。理由は、敷居を低くするためです。「敷居の低さ」について、詳しくはこちらをご覧ください。
今回から敷居を下げるため、課題書は事前に読んでも読まなくても良い形式になりました。その分、読書会の時間で本を読んでいく形にしています。
今回はウェブ配信ということで、主催者のきりうが朗読をしつつ、読書会を進行いたしました。
それでは、参加者のご感想を紹介していこうと思います。
病床の妻とその夫。夫は妻を冷静に看病しているように見えるが、やはり人間としての情はあった。
— 月埜(つきの)@趣味垢 (@tsukino_f) April 20, 2020
そして、夫婦の性格はよく似ている。
きっと、生まれ変わっても2人は夫婦になるのかもしれない。#しら読 #読了https://t.co/NrK6bHo3PE #aozora_bunko_viewer https://t.co/iDbO1EqNjB
夫婦の性格について、言及されていますが、確かにそのように思います。お互い意地っ張りというか、なんというか。自分の弱い部分を隠すために、精一杯表面を堅くしている印象を受けました。
読みやすいし、美しい文だなあと思います。奥さんが可愛い…
— October (@humonorakuda) April 25, 2020
この続編?にあたる『花園の思想』をあわせて読んだら泣けてきました#しら読
奥さんの可憐さは際立っていましたよね。物語が進むにつれ、季節が進み、時間が流れ、それとともに奥さんの病状も悪化していく訳ですが、最初は強気だった奥様が、段々と弱っていく。その課程で、旦那さんから観た奥様が、ひどく可憐に美しくなっていく。
ジェンダー的には、怒られそうな読み方だとは思いますが、作品中での夫あるいは夫に寄り添う三人称の語り手の目線からは、そう映っていると考えています。
お待たせ致しました。
— 依子_推しが動く世界線 (@camelliascolor) April 25, 2020
春は馬車に乗って、2度目の読了です。
前は某文豪とゲフンゲフンの影響で読んでましたが、今回この時期に読む春は馬車に乗ってはなんかこう色々身につまされるものがあったり#しら読
「ゲフンゲフン」が気になるのですが・・・・・・アニメやゲームでしょうか。時期については、配信でもお話ししましたが、はからずともタイムリーな作品を選んだな、とは思いました。「結核」ですからね・・・・・・。
蛾もいい出来です。
— ふくしま読書会(仮) (@dokusho__fksm) April 25, 2020
昔郡山の「てんとうふ」さんで買って、帰り道になんでか歩きながら読んでぼろぼろ泣いていた記憶があり。
自然主義的なドロドロに堕させるのではなく、妻の死という痛ましいエピソードを、あくまでも技巧的に筆でとらえている手つき、あり方に、痺れていました。今でも。#しら読
「蛾」 は、「蛾はどこにでもゐる」のことですね。横光利一の作品で、やはり亡くなった妻の話を中心にしたものです。
「てんとうふ」さんは、郡山市にある古本屋さんですね。わたしも何度か行ったことがあります。
表現が美しい作品でした。最後のシーンももちろんなんだけど、鮟鱇を「踊り疲れた海のピエロ」と表現できるのがすごい。あれが、あの鮟鱇がピエロ、しかも疲れている。#しら読
— 井坂 (@a3_hakka) April 25, 2020
表現の美しさは、さすが新感覚派といったところですよね。該当部分の一連の直喩は、なかなか思い浮かびません。
彼は彼女の食慾をすすめるために、海からとれた新鮮な魚の数々を縁側に並べて説明した。
「これは鮟鱇(あんこ )で踊り疲れた海のピエロ。これは海老(えび)で車海老、海老は甲冑(かっちゅう)をつけて倒れた海の武者。この鰺(あじ)は暴風で吹きあげられた木の葉である」https://www.aozora.gr.jp/cards/000168/files/904.html
「海の武者」に「暴風で吹きあげられた木の葉」ですよ。台詞として出てくるところもいいですよね。登場人物は、これを口にするような人物だということなんですから。
横光利一「春は馬車に乗って」
— みさか@福島県郡山市 (@toricoco) April 25, 2020
小説というよりは鎮魂歌的な作品ですね。描写や構成が上手なので読ませるものになってますが作者本人が消化したくて書かずにいられなかった印象を受けました #しら読 pic.twitter.com/BIMUJiTrC5
「鎮魂歌」というのは言い得て妙ですね。鎮魂は誰がために。それはもちろん死者のためではなく、生きている人たちのためでしかないわけで。その点、ご指摘のとおり、「消化したくて書かずにはいられなかった」というご指摘に、わたしも共感します。
#しら読 横光利一「春は馬車に乗って」
— パン(本味処かもめ) (@yurui_atsumari_) April 25, 2020
ふくしま読書会の第1回で紹介された気がしていたのですが『教科書に載った小説』に「蠅」が載っていたからですね!懐かしい……
どちらの作品も明るい結末ではないのに、そこに花束や蠅の描写があることで個人的にほどよく余韻が残って、面白かったです。
配信でも少しお話させていただいたのですが、花束や自然、景観の描写と登場人物に迫る厳しい現実のミスマッチが、非常にうまく効いている作品だと思うんですよね。
【VY1V4】 花園の乙女 【オリジナル曲】 https://t.co/RoV41VBx4u #sm31042563 #ニコニコ動画
— 依子_推しが動く世界線 (@camelliascolor) April 25, 2020
そういえばこれがあった
多分こっちは花園の思想が元だったと思うんだけど#しら読
こんな作品もご紹介いただきました! ボカロ、久々に聴きました。近代文学とボーカロイドって相性良さそうですよね。全体的に。
わたし、作品まるごと朗読した経験はほとんどなかったのですが、すごく良い読書体験ができているように思います。目で読むのとはまるで違う感覚です。情緒的な表現ですが、速度の遅い読書ができるようになるように思います。
目が滑ることも、読み飛ばすこともなく、一字一句を追っていく。日々の忙しい読書の中では、なかなか実践することのできない読み方です。
それと会話文の多い作品は、読んでいても楽しいですね。今回一番楽しかったのは、以下の場面です。
彼は妻の啜(すす)り泣くのを聞いた。彼は聖書を読むのをやめて妻を見た。
「お前は、今何を考えていたんだね」
「あたしの骨はどこへ行くんでしょう。あたし、それが気になるの」
――彼女の心は、今、自分の骨を気にしている。――彼は答えることが出来なかった。
――もう駄目だ。
彼は頭を垂れるように心を垂れた。すると、妻の眼から涙が一層激しく流れて来た。
「どうしたんだ」
「あたしの骨の行き場がないんだわ。あたし、どうすればいいんでしょう」
彼は答えの代りにまた聖書を急いで読み上げた。
この作品において鍵になっていると思われる聖書については、わたしの知識不足ゆえに、何も申し上げることができません。ただ、聖書も朗読向きだろうな、とは思います。各伝統的な宗教の経典はどれもそうなんでしょうが。
なお、作品の全文が以下から読むことができますので、ぜひご覧ください。
ここからはおまけとしてTwitter読書会のTipsを。
1 配信方法と感想の共有方法を検討しておくべき
これは視聴者の方にもコメントいただきましたが、スマホで聴きながらだとTwitterでツイートが難しいんですよね。これは改善したいと思います。
2 事前参加をしていただける方が少ない
これはわたしの広報不足ですね・・・・・・今後は生配信なども併用しながら、積極的に感想を募りたいと思います。場合によっては、依頼もありかな?
3 主催者の喉
喉で声を出しているため、本日、見事に喉をやられております。笑
腹式使って、のどに負担をかけない放送を心がけたいと思います。
さて、第2回の「しらかわ読書会 on Web」では、林芙美子の「幸福の彼方」を読むことにしました。日程は、5月6日(水・祝)を予定しています。
詳しい日程が決まり次第、改めてご案内いたします。ぜひ、ご参加ください。