しらかわ読書会

福島県白河市で読書会を中心にいろいろやっています。

しらかわ読書会 on web(#1:横光利一「春は馬車に乗って」)を開催しました

昨日25日、はじめてのTwitter読書会を開催しました。課題図書は、横光利一「春は馬車に乗って」で、7名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。Twitter読書会の課題もわかりましたので、あわせてご報告したいと思います。

 今回はTwitter上での読書会の開催をいたしました。ウェブカメラを使って読書会をやる読書会さんも多い中、当会ではあえてTwitterで実施をしました。理由は、敷居を低くするためです。「敷居の低さ」について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

kiryu-ken.hatenablog.com

 

 今回から敷居を下げるため、課題書は事前に読んでも読まなくても良い形式になりました。その分、読書会の時間で本を読んでいく形にしています。

今回はウェブ配信ということで、主催者のきりうが朗読をしつつ、読書会を進行いたしました。

それでは、参加者のご感想を紹介していこうと思います。

夫婦の性格について、言及されていますが、確かにそのように思います。お互い意地っ張りというか、なんというか。自分の弱い部分を隠すために、精一杯表面を堅くしている印象を受けました。

 奥さんの可憐さは際立っていましたよね。物語が進むにつれ、季節が進み、時間が流れ、それとともに奥さんの病状も悪化していく訳ですが、最初は強気だった奥様が、段々と弱っていく。その課程で、旦那さんから観た奥様が、ひどく可憐に美しくなっていく。

ジェンダー的には、怒られそうな読み方だとは思いますが、作品中での夫あるいは夫に寄り添う三人称の語り手の目線からは、そう映っていると考えています。

「ゲフンゲフン」が気になるのですが・・・・・・アニメやゲームでしょうか。時期については、配信でもお話ししましたが、はからずともタイムリーな作品を選んだな、とは思いました。「結核」ですからね・・・・・・。 

「蛾」 は、「蛾はどこにでもゐる」のことですね。横光利一の作品で、やはり亡くなった妻の話を中心にしたものです。

 

www.aozora.gr.jp

「てんとうふ」さんは、郡山市にある古本屋さんですね。わたしも何度か行ったことがあります。

表現の美しさは、さすが新感覚派といったところですよね。該当部分の一連の直喩は、なかなか思い浮かびません。

   彼は彼女の食慾をすすめるために、海からとれた新鮮な魚の数々を縁側に並べて説明した。
「これは鮟鱇(あんこ )で踊り疲れた海のピエロ。これは海老(えび)で車海老、海老は甲冑(かっちゅう)をつけて倒れた海の武者。この鰺(あじ)は暴風で吹きあげられた木の葉である」https://www.aozora.gr.jp/cards/000168/files/904.html

「海の武者」に「暴風で吹きあげられた木の葉」ですよ。台詞として出てくるところもいいですよね。登場人物は、これを口にするような人物だということなんですから。

「鎮魂歌」というのは言い得て妙ですね。鎮魂は誰がために。それはもちろん死者のためではなく、生きている人たちのためでしかないわけで。その点、ご指摘のとおり、「消化したくて書かずにはいられなかった」というご指摘に、わたしも共感します。

配信でも少しお話させていただいたのですが、花束や自然、景観の描写と登場人物に迫る厳しい現実のミスマッチが、非常にうまく効いている作品だと思うんですよね。 

 こんな作品もご紹介いただきました! ボカロ、久々に聴きました。近代文学ボーカロイドって相性良さそうですよね。全体的に。

 

わたし、作品まるごと朗読した経験はほとんどなかったのですが、すごく良い読書体験ができているように思います。目で読むのとはまるで違う感覚です。情緒的な表現ですが、速度の遅い読書ができるようになるように思います。

目が滑ることも、読み飛ばすこともなく、一字一句を追っていく。日々の忙しい読書の中では、なかなか実践することのできない読み方です。

それと会話文の多い作品は、読んでいても楽しいですね。今回一番楽しかったのは、以下の場面です。

 彼は妻の啜(すす)り泣くのを聞いた。彼は聖書を読むのをやめて妻を見た。
「お前は、今何を考えていたんだね」
「あたしの骨はどこへ行くんでしょう。あたし、それが気になるの」
 ――彼女の心は、今、自分の骨を気にしている。――彼は答えることが出来なかった。
 ――もう駄目だ。
 彼は頭を垂れるように心を垂れた。すると、妻の眼から涙が一層激しく流れて来た。
「どうしたんだ」
「あたしの骨の行き場がないんだわ。あたし、どうすればいいんでしょう」
 彼は答えの代りにまた聖書を急いで読み上げた。

この作品において鍵になっていると思われる聖書については、わたしの知識不足ゆえに、何も申し上げることができません。ただ、聖書も朗読向きだろうな、とは思います。各伝統的な宗教の経典はどれもそうなんでしょうが。 

なお、作品の全文が以下から読むことができますので、ぜひご覧ください。

www.aozora.gr.jp

 

ここからはおまけとしてTwitter読書会のTipsを。

1 配信方法と感想の共有方法を検討しておくべき

 これは視聴者の方にもコメントいただきましたが、スマホで聴きながらだとTwitterでツイートが難しいんですよね。これは改善したいと思います。

2 事前参加をしていただける方が少ない

 これはわたしの広報不足ですね・・・・・・今後は生配信なども併用しながら、積極的に感想を募りたいと思います。場合によっては、依頼もありかな?

3 主催者の喉

 喉で声を出しているため、本日、見事に喉をやられております。笑

腹式使って、のどに負担をかけない放送を心がけたいと思います。

 

さて、第2回の「しらかわ読書会 on Web」では、林芙美子の「幸福の彼方」を読むことにしました。日程は、5月6日(水・祝)を予定しています。

詳しい日程が決まり次第、改めてご案内いたします。ぜひ、ご参加ください。