しらかわ読書会

福島県白河市で読書会を中心にいろいろやっています。

しらかわ読書会(第7回:柳田國男「遠野物語」)を開催しました

先月の3月28日(土)、第7回しらかわ読書会を開催いたしました。

今回の課題図書は、柳田國男遠野物語」でした。

www.aozora.gr.jp

 

参加者は、わたし含めて2名でした。その分ゆっくり読書できたのではないかな、と思います。今回も夏目漱石夢十夜」のときと同様に、音読型の読書会にしました。

なお、今後はこのスタイルを続けると思いますが、それはまた別記事で。

やっぱりゆっくり作品を読むことになるので、いろいろな気づきがありました。たとえば、ザシキワラシに関する記述では、村人のなかでは「こういうやつらがザシキワラシなんだ」という共通の認識があることがわかりました。

今回はコロナウイルスの影響もあって、なかなか参加しづらい&開催しづらい空気でした。一応、アルコールのウェットティッシュやマスクのない参加者の方用にマスクも用意して実施しました。

なお、Twitterでは告知しておりますが、しばらくの間、休会いたします。その代わりにウェブ上で行うことのできる企画を検討しているところです。

コロナウイルスの折、忙しかったり、不安だったりすることも多いと思います。自分と周りの人の安全を最優先で行きましょう、生きましょう。

時間が空いた上に短いですが、開催報告でした。

しらかわ読書会(第7回:柳田國男『遠野物語』)のご案内

 課題図書:柳田國男遠野物語

課題図書はさまざまな出版社から出ているほか、青空文庫でも読むことができます。

https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/card52504.html


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日時:2020年3月28日(土)15時から17時

場所:cafe EMANON (白河市本町9)

参加費:無料(ワンドリンクorフードの注文をお願いします)

内容:課題の本を事前に読み、参加者で感想を交換し合うイベントです。お茶を飲みながら、ゆるくまったりやります。今回は事前に読んでも読まなくてもいいです。 

※「みんなで本をもちよって」というボードゲームもあわせて開催いたします。お好きな本を一冊お持ちください。

お知らせ:白河市および周辺市町村で、コロナウイルスの市中感染があった場合には中止いたします。ご了承ください。

 

参加方法:ラインかメール、TwitterのDMでお願いします。

https://t.co/efngb2nJkR

shirakawa.bookclub@gmail.com

@shirakawa_book

「いわきの読書会」に参加してきました

12月15日、福島県いわき市で行われた「いわきの読書会」に参加してきました。


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会場はいわき駅前、いわき市立図書館内の会議室です。参加者は8名ということで、ちょうどいい人数だったのではないかと思います。

課題図書は、伊坂幸太郎『アイネクライネナハムトジーク』でした。伊坂作品はたぶんはじめてでした。

中身はというと、いわゆる恋愛小説だと説明されています。が、わたしには群像劇の側面が強いように思われました。短編が寄り集まって成立している作品で、それぞれの話に主人公がいます。小さな物語の主人公たちを中心に、恋愛やそれに関する事件に対応する姿が描かれることになります。

初読の感想は「登場人物が多く、それぞれのキャラクタが把握できない」というものでした。だから、群像劇だという理解をしたんだと思います。

読書会の際にも、作品構成や登場人物の描き方については問題になりました。フィナーレを飾る「ナハムトジーク」に関しても、構成上失敗しているという評価が何人かからありました。わたしもそんな評価をしたうちのひとりです。

いま、改めて群像劇という形式を考えてみると、誰かひとりに焦点を当てることは、この作品をうまく読み解くことにつながらないように思い始めました。それぞれの物語を短編として評価せずに、ひとつの物語として読んだとき、どのように解釈できるんでしょうか。

各短編の登場人物たちは、知人や友人、親子という「つながり」でゆるくつながっています。群像劇は、特定の空間に集まった人々が、それぞれ物語を紡いでいきます。本作品は、空間のかわりに「つながり」を舞台にした群像劇なのではないかと思います。

読書会に参加させていただいたことで、少し理解が進んだ気がします。主催者さん、参加者のみなさま、ありがとうございました。

ティモシー・フェリス『「週4時間」だけ働く』(青志社)

The 4 Hour Work Week. 週4時間だけ働く。

なんて魅力的な言葉だろう。それと同時に非現実的な妄想だ、と否定したくなる気持ちにさせられる。

少なくとも、基本週5日、8時間働き、連日の残業に疲弊している自分にとっては。そして、それは多く人が私と同様の状況だと思う。

「富を持っている金持ちはもう古い。ニューリッチ(NR)は、先送り型人生プランを捨て去り、『ニューリッチ通貨』を使ってぜいたくなライフスタイルを創り出す人々のことだ。『ニューリッチ通貨』は2種類ある。時間と移動だ。これらは芸術的、科学的な概念であり、私たちがライフスタイルデザイン(LD)と呼ぶものだ」(p25)

 「先送り型人生プラン」、つまり現役の時代にがむしゃらに働き、退職したあとにゆっくり趣味に打ち込もう・・・・・・。この本がしているのは、これをやめようという提案だ。そのための方法論については、4種類の手段が挙げられている。

「定義Definition」

「捨てるElimination」

「自動化Automation」

「解放Libertion」

定義をしなおし、無駄なことをやめ、必要なことは自動化し、固定概念やルールから逸脱していく。それがライフスタイルデザインであり、ニューリッチ的な生き方であるという。

「先送り型人生プラン」を捨てる必要性は、リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)を読めばより明らかになる。人生100年時代を生きる私たちは、昔の人たちと同じように生きていく訳にはいかない。

無駄な部分も多いけれど、面白い本だと思う。

しらかわ読書会(第5回:太宰治「女生徒」)を開催しました

昨日11月23日(土)、第5回しらかわ読書会を開催いたしました。

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今回の課題図書は、太宰治「女生徒」です。

www.aozora.gr.jp

短い作品ですので、もしお時間のある方はぜひ読んでみていただければと思います。タイトル通り、女生徒が日常のある一日の出来事について語る、という作品です。

参加者は、わたし含めて七名でした。参加者の方の感想や気になった部分は次のような記述でした。

 

「眼鏡や下着など、自分自身が身につけるものについて」

「自分自身が女学生だった頃を思い返すと、『わかる、わかる』となる部分がある」

「裏側を覗いている感じがする」

「語り手の気持ちがとてもよくわかる。悩んだり解決したり、精神状態の上下が共感できる」

「書いているのがオッサン(=太宰)だと思うと、ちょっと気持ち悪い」

「女生徒が語っている部分と作者の太宰が顔を覗かせる部分がある。最後の一文は、太宰だろう」

「饒舌な語り口が良かった。思考の流れを書いている」

「星空のシーンが良い」

「誰しもが経験した来た時期で、過ぎてしまったから『かわいいな』と思える。ただ、自分が同年代だったら、友達になるのは難しいかもしれない」

「ちょろいので、こういう女の子がいたらすぐ好きになって、おそらく傷つけられて失恋する気がする」

「性的な葛藤のようなものが感じられる。それを男性が書いたといういやらしさも感じた」

 

おおむね「誰もが通る道」という感想は共有されていたものと思われます。主人公を表すキーワードとして、「上から目線」というものもありました。きりゅう個人は、いわゆるYouTuberの人たちのことを思い返していました。

YouTuberのなかには、ふだんの朝や夜の生活を公開している人たちがいます。「モーニングルーティン」や「ナイトルーティン」と呼ばれるものです。

もちろん、撮影され公開されているのは、普段の生活ではなくて、YouTubeで全世界の公開されることを前提にした「日常」です。そこにはYouTubeにおける「ルーティン」動画群の作法や、動画を観てもらうためのテクニック、そして本当に見せることができない生活感をうまく隠蔽していく作品作りが行われています。

「女生徒」を読んでいると、そんな観ることを意識されている部分がすっかり抜け落ちた生々しい感じがしました。「裏側を覗いている感覚」の根源は、そのあたりにあるように思われます。

もともと本作品は太宰のファンである女性が書いた日記をもとに創作されたものだそうです。日記はもともと誰かに呼びかけることはあっても、読まれることを想定していない、もしくは読者には自分しか想定されていないはずです。そこには「ルーティン」動画のような、自分の生活を整形してきれいに見せる意図は働いていない。

そこが太宰の技術なのか、とも思います。日記を再構成し、自分自身の考えを巧妙に織り込みながら、それでいて生々しい「裏側」をそのまま表しているように感じさせるのですから。

お足元の悪い中、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。

次回は、森見登美彦太陽の塔』を読みます。はじめての長編なので参加者が集まるのか、ちょっとどきどきしております。

kiryu-ken.hatenablog.com

クリスマスっぽく本の交換会なども実施したいと考えていますので、ぜひご参加ください。

常設展示@野口英世記念館

会津編、その2。会津民俗館から歩いて3分のところにあります。いつだか忘れましたが、ここ1年以内にリニューアルした館です。

個人の顕彰を目的とした館はあまり惹かれることがないのですが、この館はなかなか面白かったです。

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最初の展示は・・・・・・古民家です。会津民俗館から古民家が続きますが、こちらは民家としてではなく、野口英世の生家として展示が行われています。カヤ葺きの屋根と老朽化した家屋を守るため、屋根の上に屋根が設けられているそうです。

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主たる展示は生家の見学の後、施設の2階。各展示室の大パネルや解説パネルが、写真とデザインをうまく組み合わせたものになっていて、非常にリズム感のある展示になっていました。また、野口博士のロボット(?)や実験をテーマにしたゲームがところどころに取り入れられており、子どもから大人まで楽しめる展示です。


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二次資料が中心の展示ではありますが、一次資料やレプリカも展示されていたはずです。個人の顕彰館でこんなに楽しい館はなかなかないのではないでしょうか。

問題は展示更新の余地がほとんどないことでしょうか。展示替えを想定した展示になっていないため、展示替えは難しいでしょう。替えるとすれば、委託で展示をまるごと交換するしかないと思います。

ロボやゲームなど、現在の水準では非常に面白いものだと思いますが、メディア関係は進化がめざましく、おそらくすぐに「一昔前の展示」という捉え方をされるようになってしまうのではないでしょうか・・・・・・。

財団立、財団運営の館ですから、その時に展示替えの費用を捻出することができるのか・・・・・・少し不安です。

 

未来のことはともかく、いまの状況ではわたしのような博物館オタクから観光客まで、老若男女どんな人でも楽しめる館だと思います。猪苗代に行く際はぜひ。